環境講演会 聴講ワンポイントメモ

海洋生物と環境ホルモン
日時
&場所
2001年3月25日・愛媛県総合科学博物館「地球環境セミナー」より
講師 田辺信介(愛媛大学沿岸環境科学研究センター教授
メモ


  • 1970年代以降、クジラやアザラシなど海の哺乳動物の奇形や大量死が相次いでいる。海の哺乳動物から検出された化学物質の種類はこの30年で激増しており、異常な化学物質の蓄積が異変に結びついていると考えられる。
  • 毒性の強い化学物質(有機塩素系化合物:HCHやDDTなど)による汚染には以下の特徴がある。このような特徴が上記大量死を引き起こしていると考えられる。
  (1)汚染源が南下
   先進国で使用が禁止され、発展途上国での使用が多くなっている。
  (2)北の海が汚染物質の巨大な溜まり場
   気温が高い地域では汚染物質は大半が大気に移行し、地球規模で広がった後、
   温度が低い北の海に溶け込むことになる。化学物質はそれを排出した地点から
   はるかに離れた場所にも汚染を引き起こす。
  (3)体内に貯蔵
   汚染物質は脂に溶けやすく、大半が脂皮に蓄積される。
  (4)世代を越えて移行
  メスはこどもに乳を与えることで汚染物質を排出している。
  そのことはこどもに汚染が移行することを意味し、子供は体重が少ないだけに
  大きな影響を受ける。
  (5)弱い分解力の海の哺乳動物に大きな影響
  海の哺乳動物は肝臓の酵素の働きが人やイヌとは異なり、化学物質を壊す力が
 弱いため、汚染を蓄積しやすい。

  <まとめ>

○野生生物の汚染はヒトへの警鐘として活かすべき。
○安全性を考えるにあたっては、従来のようにヒトへの影響を考えるだけでなく、ヒトを含む生態系全体を保全する考え方(生態系本位の環境観)
に転換する必要がある。

【聴講して・・・】
「メスは授乳により自らは浄化されるが、その分、こどもに大きな汚染を与えてしまう。」…なんとも悲しい現実だと感じました。
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