メモ |
- クマタカは環境省の「レッドデータブック」に記載されているとともに、平成5年にできた「種の保存法」でもトキやライチョウ、ヤンバルクイナなどと同じランクで絶滅の危機に瀕している鳥のリストに入っている。
「レッドデータブック」には法的拘束力が無いが、「種の保存法」ではこれらの種類が確認された場合、何らかの保護策を講じる必要があると定められている。
- 「ワシ」と「タカ」は分類学的には同じ(大きさの違いだけ)でクマタカもワシの仲間。「クマ」は「大きくて力強い」という意味。羽を広げた大きさは2m前後。急降下時のスピードは最高で約350km/hにもなる。羽と尻尾に白黒の縞模様がある、羽が短く後ろが膨らんでいる(短い羽で森の中でも飛びやすくできている)のが特徴。餌はヤマドリ、ノウサギ、ヘビ(主にアオダイショウ)をはじめ、テン、タヌキ、キツネなど。時にはサルさえも襲う強力な猛禽である。巣をつくる木はモミとアカマツの大木がほとんど。巣は大きさ、厚みともに1m数十cmくらい、重さも200kgくらいある大型のものが多い。ときおり、アベマキとか、そう大きくない木の股にやや小型の巣をつくることもあり(「南日本型」の巣と呼ばれる)、クマタカが熱帯雨林の出身であることをうかがわせる。
- 行動圏は5km四方くらい。飛んでいるのはほとんど自分のエリア内。自分の縄張りに侵入してきた仲間には、 「ディスプレイ」して追い出すが、仲間どおしであまりケンカはしない。
- クマタカは熱帯雨林にもいるが、日本のクマタカはそれとは「亜種」が異なり、日本にしかいない。
- 南方出身の鳥によく見られる特徴は「保守的」(変化を好まない性格)であること。クマタカも、巣をつくった木が枯れても木にこだわって同じ巣を使い続ける。すぐ近くに立派な木があっても移ろうとしない。絶滅危惧種になるような生き物はなんらかの弱点を持っていることが多いが、クマタカの場合もこういう保守的な性格がアダになって環境変化に対応できず、生息数を減らす要因になっていると考えられる。工事などの環境変化で繁殖を放棄することもあり得る。
- クマタカが一年に生む卵は1個。クマタカは手堅い性格で、かつては卵を産んだら必ずヒナを育てていたが、最近、変わってきた。ヒナがかえっても死なせてしまうケースが増え、かつて80%くらいあった繁殖成功率が今では10%以下くらいにまで落ち込んでいる。クマタカの寿命は30〜40年あるため現在の個体数は急激には下がらないだろうが次世代が育っておらず危険な状況だ。
- 山鳥坂ダム予定地周辺は繁殖にいい場所。6羽もいれば何年かの間には必ず繁殖していると思う。そういう年を含めて調査してみなくては行動圏の内部構造はわからないし、どう保護したらいいかもわからない。今だけをみて「影響がない」とするのは乱暴。問題意識を持っている。
【参考資料】
・ 日本自然保護協会ホームページ→「データベース」→「猛禽類とその生息地の保全」→「日本にくらすイヌワシとクマタカの現状」
・ 広島クマタカ生態研究会ホームページ
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